「野ばら」アフタートーク 園田喬しさん

園田喬しさんにお話いただいた内容をまとめました。
(2015/10/3 男性バージョン)

参加者:
園田喬し(演劇ライター、「BITE」編集長)
鳥山フキ(ワワフラミンゴ主宰)


男性バージョンを見る方がちょっとお得なのかと思ったんです

鳥山:園田さんは「BITE」という演劇雑誌を作っていらしゃる方でして、今カウンターに置いてあるんですけど、2号にはワワフラミンゴの事をちょっと取材をしていただいてるページなどもありますので、もしよろしければ皆さまお買い求めいただければと……。

園田:ありがとうございます。いきなり最初から宣伝を……(笑)。

鳥山:いかがでしたか?

園田:あの、勿論すごく面白かったんですけど、ここがまず(演者と客席の距離が)近いじゃないですか。ワワフラはホールもたまにやりますけど、こういうコンパクトなアトリエとかで上演することが多いから、狭い空間で距離感が近くちょっと不思議な世界にうまく迷い込める印象があるんですけど、今日も本当にそういう感じで、あっという間に世界に入っていく感じが凄い面白かったなーっていうのと、あと僕は今回男性バージョンしか見てないんですけど、特に最初の15分位はワワフラの女優さんがしゃべってる感じがすごい頭の中にバーっと出てきて、これは一本で両バージョン想像できるなっていう印象がありました。

鳥山:なるほど。

園田:どなたがっていう訳じゃなくて、ワワフラの女優さんもそうですし、ワワフラによく出てる客演の女優さんとかの芝居の感じっていうのが、すごい頭の中で再生されて結構面白い体験だなと思ってみいてました。

鳥山:ありがとうございます。

園田:ワワフラの男性の芝居って言うのはとってもレアだから、女性バージョンを見て男性バージョンを想像するっていうのはちょっと難しいかもしれないんですけど、男性バージョンを見ながら女性バージョンを想像するのは結構容易というか、やりやすいんじゃないかなと思っていて、そういう意味では男性バージョンを見る方がちょっとお得なのかと思ったんです(笑)。女性バージョンは女性バージョンでまた良さがわかるのかな、って気がしますけどね。

鳥山:両方見てる方から共通して言われることがあって「女性の方がひとりひとり、個人個人な感じがする」「男性の方が関係性がわりと密だ」って。同じこと喋ってるんですけど、やっぱりその、男性があんまり女子の「そうだねそうだね」みたいな話をすることって現実的にはそんなにないのかなって気がして、だから現実的ではないような近さを感じるのかもしれないって思ってますね。

園田:やーでもその「女性っぽくない」とか「男性っぽくない」みたいな違和感は僕はほとんど無かったですね。ただそう言われると、確かにああいう会話は男子校では無いのかなっていう気はしますけども(笑)。台本は一緒なわけですよね?

鳥山:そうですね。多少アレンジは変えてあるんですけども、小話とかセリフ回しとかは同じです。

園田:ふんふん。男性同士のコミュニケーションってもうちょっと雑っていうか、投げやりな感じになるって気がするかもしれないですね。女の人の方が、もうちょっとお互いにコミットしようとしているというか、そういうのあるかもしれないですけど。

ワワフラミンゴ「野ばら」16


ちょっと大変だったなーって後から思いました

園田:男性の衣装がみんな、おしゃれでかわいいなと思って見てたんですけど鳥山さんが選んでるんですか?

鳥山:衣装の日っていうのが稽古の時にありまして、とにかく使えそうなものを全部持ち寄ってもらってその中からあれこれしてもらって、組み合わせるって感じですね。

園田:じゃあ、最終的に決めたのは鳥山さん。

鳥山:私一人だと判断できないことも多いので劇団員の原口に来てもらって意見を聞いたり、他の男性の役者にも「どう思う」」ってことで意見を聞いて決まった感じですね。

園田:衣装も可愛いんですけど、見た目もフェミニンな感じの人もいて、それもなんかワワフラっぽいなと思ってみてました。原口さんがカウンターにいらっしゃったのは何か狙いがあったんですか?芝居の、作品のうちに入ってる?

鳥山:まあまあそうですね(笑)。

園田:そうなんですね。ちょっとこう、にこやかに微笑んだり下を向いたり結構表情が変わるんですけど、それも全部演出が入ってるんですか?

鳥山:原口さんのアドリブです。

園田:結構いいタイミングで、ふふっていうやわらかい笑顔をうかべたりするから、「あそこまで作品がつながってるのかな?」っていう想像で見てました。

鳥山:そうですね。(客席に向かって補足)端の席の方は見えなかったと思いますが、カウンターに一人女性が立ってまして、そこで何をするわけでもなくただ立ってるだけなんです。

園田:あとはタヌキの名児耶さん。あれは女性バージョンも両方出てるんですか?

鳥山:両方出てます。彼女は今、妊娠9ヶ月でして、タヌキの役だとあまり気づかれないみたいですけど実際はかなりお腹大きいですね。

園田:それも含めてタヌキにしようと?

鳥山:普通にやるともう、妊婦になってしまうって言うのもありますし、実際問題、妊婦さんだと体調が心配っていう。「何かあった時にそのシーンを全カットしても成立するようにしよう」ということでゲスト扱いにしたんですけど、でもそうしたら両方出演する方が大変になってしまって、稽古も両方来なくちゃいけないしこれ、ちょっと大変だったなーって後から思いました(笑)。

ワワフラミンゴ「野ばら」16


これ、わりとその……◯◯をテーマにしてるんですよ

園田:当パンに、男性バージョンがやりたいからこの「野ばら」の再演にしようと思った、っていうことが書いてありましたけど、男性だけの稽古っていうのは鳥山さん初めて?

鳥山:はい

園田:どうでした?稽古場。

鳥山:やっぱり最初は怯えて、原口さんが心配してきてくれて。なごやさんがいるので、いる時はなごやさんとやってるんですけど、うちに出てくれるのが二回目の人とかもいるので人としては全然いい人なんですけども。なんだろう、やっぱり雰囲気が違いますよね。なんか打ち解けないっていうか。

(まもなく終了の「そろそろ」という合図)

園田:……そろそろと言う声が、なんか今すごい中途半端なところで(笑)。

鳥山:そうですね打ち解けないっていうところで(笑)。

園田:打ち解けない、で……まあじゃあ今の話の続きでもいいんですけど、なにかお客様からご質問があればと思うんですが質問のある方、挙手を……なんで僕こんな司会みたいな……すみません!

鳥山:いやいやありがとうございます(笑)。

――(客席から質問)今回なぜ2バージョンやろうと思ったのかを教えてください。

鳥山:劇団員の方で「やったら面白いんじゃないか観てみたい」ということで出てきた企画なんですね。自分でも「男性が苦手、あんま書けないと」いう気持ちは前からあったんですけども、だからいいやと思ったことはあんまりなくて、いつかやりたい、やらなきゃいけないっていう気持ちはあったんです。なのでその企画に乗ったっていう感じですかね。

――やった上で手応えとかありましたか?

鳥山:そうですね。なんだろう……男性をやった時に「なんて破天荒なんだ」「これ凄い面白い」「これ是非観てもらいたい!」って思ったんですけど、でもこれ再現できるかって言うと、自分の実力じゃないところが多くて、やっぱり役者によるところがすごい大きかったんですね、今回は田辺純くん……一番最初に出てきた「お風呂が……」っていう役者さん。

園田:林檎の服を着てた。

鳥山:そうですね。彼の演技が色々変わるんですね。私は何も指示してなくて、周りの役者さんがそれに合わせてやるって感じなんですけど、それ周りの人もわりと楽しんでやってくれて、こっちも凄い笑ってっていう感じだったので。なんかその、やったことは凄いよかったんですけども、自分のスキルが上がったかって言われるとそれはちょっとどうだろう、っていう感じはちょっとします。

園田:なるほど……。ではせっかくなんでもう一方くらい……。

――男女どちらも拝見しました。セリフはほとんど同じなんですけど結構立ち位置とかは結構変わってたと思うんですけど、演出でやっているのか、それとも俳優さんに任せているのか、どうなんでしょうか?

鳥山:「男女分けよう」っていう意識はそんなに無くてですね。ただ、初期の頃に「分かれていいのか、一緒にするべきなのか」迷ったんです。けど私の知り合いで、男女同じ演目って知らずに予約しちゃった子がいて、ちょっと気の毒だなって思って、それからはもう「自然に分かれるなら分れるでしょうがない」っていう風にしましたね。その結果が立ったり座ったりっていう。男性はもうあんまり口出ししてないですけど、女性に関してはまあまあ口出しした気がします。

園田:……じゃあこんな感じですかね。

鳥山:最後に一個だけいいですか?

園田:なんでしょう?

鳥山:あの……機会があったら言おうと思ってたんですけど、なかなか言う機会が無くて。

園田:じゃあ今日は貴重な一回に。

鳥山:そうなんですよね。この作品、わりとその……時間をテーマにしてるんですよ。でもこれ言わなきゃ誰も気付かないなって思って、今ここで言ってみたんですよね。

園田:(笑)。

鳥山:時間がこう……なんだろう……同じ時間ができて、もう決まってるんですけど、それがこう……なんだろう……わからなくなるように作りたいと思って作ったんですけど、これ多分言わなきゃわからないだろうと思って、一回くらいアフタートークで言いたいなって、今言ってみました。

園田:アフタートークがあるのはこれで最後ですもんね。

鳥山:そうですね。

園田:だから……よかったですね(笑)。

鳥山:はい。

ワワフラミンゴ「野ばら」17