「野ばら」アフタートーク 田中六大さん

田中六大さんにお話いただいた内容をまとめました。
(2015/10/3 女性バージョン)

参加者:
田中六大(マンガ家)
鳥山フキ(ワワフラミンゴ主宰)


基本的にわーっていう感じ

鳥山:田中六大さんは私が大好きなマンガ家の方で、今日が初対面です。マンガ本を出したり、放電横丁という青林工藝舎がやっているホームページでWEB連載をやったり、児童書のイラストレーションを描いたりされる方です。

田中:実は僕、全然演劇に詳しくなくて、ワワフラミンゴも今日初めて見て。マンガ家としても、これ(「クッキー缶の街めぐり」)が1冊、5年前に出ただけで、なぜ僕がここにいるのかよくわからないんですけど、なぜ僕をお呼びになったんでしょうか。へへへ。

鳥山:マンガがすごい面白いんですよ。あとはインタビューを拝見して、性格がよさそうだと思ったので(笑)。

田中:怖くなさそう、みたいな感じで。

鳥山:そうですね、それも大きい要素ですね。

田中:怖い人と話すの怖いですもんね。今のお話を観て、細かいギャグを積み重ねて、全体の人間関係やどういう状況なのかはあんまりヒントがないように思えたんですけど。感じの作り方が僕のマンガも似てるっていうか。

鳥山:そうですね。

田中:かもしんないな、と思って。僕のマンガは、ちっちゃいギャグをいくつも合わせて作ってくみたいな感じなんですけど、お話を作るときはそういう作り方されてるんですか。

鳥山:そうですね。設定から先に作るってことはまずなくて、細かい小さい台本みたいなものをいくつか作って、そこから構成を考えて、みたいな感じなので。あとから設定が出てくるかもしれないですね。なので、説明が全然、一切ないみたいな。

田中:そうめん型の宇宙人を殺すところとか、僕は好きなんですけど、ああいうのを日常の中で思いついたら少しずつ溜めといてみたいな、それとも一気にバーッて書き上げていくんですか。

鳥山:いや、そういうちょっと思いついたこととかをメモしておくってことはあるんですけど、台本が上がる前に結構沢山稽古がありまして。

田中:上がる前に稽古?

鳥山:上がる前に(笑)。もう全然、全然上がってないんですよ。

田中:全然上がってないんですか!?

鳥山:全然上がってない状態で稽古が始まりまして。稽古に行く前に、1時間とか30分くらいどっかに寄って、ノート半ページくらい台本を書いてそれをちょっとやってもらったり、あとは役者さんに雑談をしてもらって、それをだいぶ積み重ねて、段々台本ができていくっていう感じなんです。

田中:じゃあやっぱり、細かいギャグを自分で考えたっていうより役者さんから出てきたものもあったりするんですか。

鳥山:役者さんから出たものもけっこうありますね。役者さんがしゃべったものを、そのままノートにわーって書いて、それをパソコンでわーって(笑)。

田中:あぁ、そうなんですか。基本的にわーっていう感じ。

鳥山:すごい、進み遅いです。これは再演なんですけども普通の台本だと、本番が押し迫って来て、もうどうしても今日出さなきゃいけないっていうときに、どうにかするっていう……。

田中:つらい気持ちでがんばるんですね。

鳥山:一個一個のネタはわりと楽しんで書いたりするんですけど、それをまとめる、いざ構成を考えるときにすごいストレスが。

ワワフラミンゴ「野ばら」10


自分が楽しいものを作る

田中:構成を入れ替えたりしてるんですか。このネタを前に後ろにとか。僕はけっこうやるんですけど。

鳥山:やりますね。

田中:最初の1コマ目に、例えば、唐揚げのこと話してて、一番最後に唐揚げのことを話すとキレイじゃないですか。

鳥山:(笑)

田中:まとめるって言わないですかね。えへへ。そういう小手先のテクニックみたいなものはあまりないですか。

鳥山:そんなことないんですけど……描くとき全然ストレス溜まらないんですか。ずっと楽しい感じですか。

田中:いや、描くのは全然楽しくないんですけど。でき上がったのを見るのが一番楽しいです。どうですか、自分でご覧になってて。

鳥山:楽しいです(笑)。

田中:完成度として、僕のマンガは完成度としてちょっとアレなんですけど、ちょっと低いんですけど。

鳥山:(笑)。そんなことないですよ。

田中:いや、大丈夫です。気をつかってくださらなくて……。へへへ。だけどやっぱり、自分の気持ちにすごい合ってるから楽しいんですよね。そういうのってないですか。

鳥山:自分で楽しければ、やっぱり楽しいですね。

田中:最高ですよね。自分が楽しいものを作るっていうのは。

鳥山:たぶんその、完成度が低いっていうのは、一般的に言われるエンタテイメント的な完成があんまりないっていう意味ですよね、きっと。

田中:まあ、ポジティブに考えれば。うひひ。いや、まあ自分が楽しいからいいんですけど。

ワワフラミンゴ「野ばら」11


役者がなんとかすればいい

田中:僕、輪ゴムとか落ちたりするのがすごい気になっちゃったりするんですけど、そういうのドキドキするんですけど、大丈夫ですか。

鳥山:するめのことですか? 輪ゴム、落ちた?(※舞台中、北村が持つ輪ゴムが床に落ちてしまっていた)

田中:ライブだから観てるとすごいドキドキしちゃうんですけど。

鳥山:ドキドキするんですけど、自分はまったくそれは全然、なんとも思わないっていうか。役者がなんとかすればいいと思って(笑)。

田中:役者さんを信頼してるんですね。

鳥山:もう役者さんがなんとかするから、私は別に気にしないっていう感じです。

田中:じゃあ安心して?

鳥山:安心してずっと見てます。

ワワフラミンゴ「野ばら」12


歌で終わらせる

田中:お話が終わるとき、僕は小手先のアレなんですけど、終わるときすごい終わりっぽくしたり。みんなで一斉に歌を歌ったりとかして……。マンガだと、遠景で人が後ろのほうに歩いて行ったりすると終わりっぽいじゃないですか。

鳥山:え?

田中:遠景で、コマがちょっと大きくなって、後ろ姿の人がこうやって歩いてると、ものすごい終わりっぽいじゃないですか(突如立ち上がって遠ざかる動き)。

鳥山:ああ終わりっぽいですね(笑)。

田中:ちょっと終わんないなってときに、そうするんですけど(笑)。そういうのってあんまりやらないんですか。

鳥山:終わりはすごい難しくて、どうしたら終わるかみたいなことで、やっぱり考えるんですけど。でも歌で終わらせるっていうのは方法として一つあって、困るとやるときあります。

田中:どんなお芝居も歌が来たら終わりなんだ、みたいなことを。歌で終わりっぽいですよね。

鳥山:田中さんのインタビューで「唐組のお芝居は後ろの幕が開くと終わりになる・それがマンガだと大ゴマに当たる」という事でお芝居の終わりをマンガに取り入れてらっしゃるというのを読んだんですが。

田中:テント芝居ってだいたい開きません? それで、オォウみたいな感じで終わりじゃないですか。オオオーーイ(と遠くに向かって手を振って叫ぶ)それで歌を歌って終わり。イメージですけど。

鳥山:(笑)。それ、子どものときにご覧になったんですか。それとも大人になってから。

田中:父が演劇が好きでやってたんで。父に連れられて観たやつはだいたいそうやって終わってました。あと最近観た、水族館劇場もすごいテント芝居なんですけど。あの…すごい鉄パイプとかすごい組んで……すごい……すごいんですよ。すみません……表現力がなさすぎて。ふへへへ。

鳥山:いえいえ。ものすごいんですか。

田中:はい。それはもう、最後は後ろの幕が開いたりして終わる……。

鳥山:同じ終わり方ですか。

田中:はい。だから後ろが開いたら終わり……。

鳥山:でも、「オオオーーイ」が……。開くだけじゃ終わりにならないじゃないですか。「オオオーーイ」がないと、っていう気もしますよね。

ワワフラミンゴ「野ばら」13


なんかの役に立つかもしれない

田中:今回本屋さんじゃないですか。本屋さんに合わせてちょっと変えたりしたんですか。

鳥山:そうですね。でも物を探すシーンは役者に任せて、だいたいこのへんの場所を使ってくれっていう話だけで、あとは2人の話し合いで、なんとかしてもらったっていう。

田中:丹波くんが下で待ってる、とかも、ここが2階だからっていう。場所に合わせていろいろ考えたりとか、下見に来たりして?

鳥山:そうです、そうです。

田中:内田百閒の本が出てきたり。あれも本屋さんは関係ない?(※内田百閒の同じ本が5冊出てくるシーンがあった)

鳥山:これ再演なんですけど、もともと初演のときは2冊だったんですね。汁を零してもう1冊買ったっていうのはホントの話でして、で、再演まで3年とか4年くらいあるんですけど、古本屋とかで見るたびに、なんかの役に立つかもしれないと思って一応買っといたんです。

田中:ホントの話なんですね(笑)

鳥山:それが段々溜まってきて。最初の2冊は別に、そんなお芝居に使おうとかそういう気持ちじゃなくて普通に買ったんですけど、なんかの役に立つかもしれないと思って一応買ったので、今回全部使おう、っていうことで増えたんです。

田中:本屋さんとかは関係ないんですね。

鳥山:もっと本のネタを使えばよかったのかもしれないとは思うんですけど、でもその匙加減がちょっと難しいですね……。

ワワフラミンゴ「野ばら」14


一から男性の台本は書けない

田中:今回、男バージョンと女バージョンとあったみたいなんですけど、それはどういう気持ちで。

鳥山:私、こういう女性バージョンの話ばっかりみたいのを、もう10年以上続けてたんですよ。男性は一人までってことで、男性と女性が話してるシーンはあっても、男性同士が話してるっていうのはやったことがなかったんですね。苦手で、書けなかったんですけど。

田中:男の人の気持ちがわかんないみたいな?

鳥山:男の人同士の会話がすごい書きづらいんです、苦手意識が先に立って、やっぱり勇気が必要なんですよね。一本そうやって男の人を2人呼んだら、それはもう書かないといけないっていうものがあるので。

田中:最初に決めるんですね、誰が出るかってのは。

鳥山:誰が出るかっていうのまず決めて、台本が一番後みたいなのが多いので。今回は劇団員のほうでそういう企画を立ててもらって。でもやっぱり再演じゃないと、一から男性の台本は書けないっていうことで、男性バージョンがあったんですけど。全然違います、男性。

田中:ああー……そうなんですかぁ。

鳥山:全然、違いますね。

田中:筋は同じというか。

鳥山:筋は基本的には一緒なんですけど、今までの方の感想で、女性のほうが一人ひとり独立してる感じがして、男性だと、逆にギュッってなってる。関係性が近いように見えるっていう。

田中:それは鳥山さんの演出でそうなってるんですかね。

鳥山:いや、全然演出してないんですよ。男性がうまく演出できなくても、わりと放置してる感じなんで。

田中:ああ、そうなんですか。じゃあ自然に。

鳥山:自然にそうなったんですよね。

田中:そっか……えへへへへ…………。

鳥山:そろそろちょっと、時間が来てるようなんですけど、六大さん何か、お仕事の告知とかありましたら。

田中:11月……。あっ、いや、ないです。いいです、大丈夫です。

鳥山:ええ?(笑)11月、に何があるんですか?

田中:11月に展示やります。

鳥山:どこでやるんですか?

田中:青山のビリケンギャラリーっていうところで、14日からやります。(※詳細

鳥山:楽しみです。メキシコの絵とかありますか。

田中:メキシコ……ありません。

鳥山:(笑)。(メキシコの)ドクロの絵とかを描かれるときとかもあって、そういうのすごい好きなんで、一応聞いてみました。

田中:メキシコ、僕の中で流行ってたんで。

鳥山:ごめんなさい、今は違うんですね。

田中:今はブリティッシュ・フォークが好きなんで。

鳥山:(笑)。わかりました。じゃあ楽しみにしてます。ホントに今日はありがとうございました。

ワワフラミンゴ「野ばら」15

編集:みよし