「野ばら」アフタートーク クリス グレゴリーさん

クリス グレゴリーさんにお話いただいた内容をまとめました。
(2015/9/26 男性バージョン)

参加者:
クリス グレゴリー(演劇研究者)
鳥山フキ(ワワフラミンゴ主宰)


上演するとどうなるのか本当にわかりませんでした

ワワフラミンゴ「野ばら」5

鳥山:クリスさんは、この台本を一回読んでらっしゃるんですよね。

クリス:うん、読みました。

鳥山:実際見ていかがでしたか?

クリス:正直に言うと、予想を遥かに超えました。うん、かなり気に入りました。

鳥山:ありがとうございます。

クリス:この台本、僕にとってすごい難解でした。不条理でも、シュールでもない戯曲だから「これなんなの!?」って。上演するとどうなるのか本当にわかりませんでした。で、このような気持ちいい感じになるとは全然予想しませんでした。本当に素晴らしかったです。その、うん……(笑)。いや、あの、思い出すだけで笑ってしまいます。草を食べる場面とか……。

鳥山:ああ、今日すごい食べてましたね。

クリス:普段はそんなに食べないんですか?

鳥山:この一つ前の回がそうでもなかったので「もっと食べさせて」みたいなこと言ったらこうなったんです(笑)。


これでもう終わりにした方がいい

ワワフラミンゴ「野ばら」6

クリス:初めて男ばっかりと創作してみてどんな感じでした?

鳥山:5人いるじゃないですか。キャラクターがあるんですけども、女性のバージョンと男性のバージョンで役割が結構違うかなって。関係性も。同じ台本なんですけど。

クリス:うん。

鳥山:わりと違って見えるなって自分では思ったんですよね。2つご覧になってる方しか分からないかと思うんですけど、男性の方が、兄弟がより兄弟っぽいかなって。

クリス:稽古場の雰囲気とかも結構違いました?

鳥山:やっぱり全然違いますね。男性はですね、最初に出てきたトレーナーの男性いるじゃないですか。けっこう破天荒な感じの。(※田辺純のこと)

クリス:(笑)。

鳥山:みんなが彼を世話をするみたいな感じで、ちょっとおもしろかったです。

クリス:また男性と芝居をやろうと思いますか?

鳥山:うーん。

クリス:これでもう男性はいい、みたいな?

鳥山:ご覧になってどう感じたか分からないんですけど、私これわりと良かったって思ってるんです。

クリス:うん。

鳥山:それはやっぱり役者さんによるところも結構大きくて、なかなか良い感じの役者さんでできたなっていう気持ちがあるので「ああ、これでもう終わりにした方がいい」って。

クリス:良すぎてもう二度としないみたいな。


男の人が女の鬼を飼うってちょっと気持ち悪いかもしれない

ワワフラミンゴ「野ばら」7

鳥山:ワワフラミンゴ自体が女性がほとんどの劇団で、男性って今まで各公演一人までしか出たことないんですね。

クリス:うん。

鳥山:私、男性同士の会話って書いたことないんです。今回は再演なので基本的には女性の台本が元々あったのを書き換えたんです。

クリス:そんなに変わってないんですよね。

鳥山:そんなに変わってないですね、確かに。

クリス:今朝、台本読み直しましたけど全然変わってません。赤石くんが赤石さんになったり、それぐらいかな?あ、あと鬼の性別も変わりました(笑)。鬼の性別が変わったのはどういうことですか?

鳥山:あんまりこう、変える変えないっていうよりは……。

クリス:悩んでました?鬼の性別について。

鳥山:ちょっと悩みました。どうしようかなって。女性が男の鬼を飼うのは可愛いんですけど、男の人が女の鬼を飼うってちょっと気持ち悪いかもしれないって。

クリス:(笑)。

鳥山:考えましたけど、結果的には男性バージョンの鬼はメスでいくことにしたんですよね。で、ちょっと話が戻りますと、男性同士の会話を書く自信があんまりないんですよね。

クリス:このままで全然面白いんですけど。皆さんそう思いませんか?みんなすごく可愛い。

鳥山:そうですね。その通りなんで、あんまり自分で意識しないで書ければいいのかなあって思いました。こういう女性もいて男性もいて、っていう感じだったらもしかするといいのかもしれないです。


悪役が切り取られたみたいな世界

ワワフラミンゴ「野ばら」8

クリス:稽古では別々のバージョンが影響しあったりというようなことがありましたか?男性バージョンがこう変わったとか、女性バージョンがこう変わったとか。

鳥山:自分では男子がこうだから女子はこうしようみたいなことはなくて、役者に合わせて書いてたって気がするんですけど、役者間では同じ役があるじゃないですか。「自分の役をやってる人がこうだな」っていうのは多少はあったかもしれないですね。

クリス:影響は特にない?

鳥山:自分ではそんなに。男性は男性、女性は女性って感じでやってたと思います。でも私やっぱり男性に、その……。あんまり男性男性って言ってもう本当に申し訳ないですけども……。

クリス:あんまり人間らしくないけどね(笑)。

鳥山:え?人間らしくない?

クリス:いや、登場人物が。人間らしいと思いますか?

鳥山:うーん……。でも元からあんな感じです。役者さん。

クリス:え、本当に?

鳥山:そうだと思いますよ。元々そんな……。ほとんど素だと思います。どういうところがそんな人間らしくないですかね?

クリス:なんか会話が会話っぽくない。人間がするような行動じゃない……。どう言えばいいんでしょう。

鳥山:そうですね。やっぱりちょっと切り取り方みたいなことなんですかね。

クリス:切り取り方というと?

鳥山:なんかその、色々あるうちの、人間の人間らしくないところだけを取り出して書いてるんですかね。うーん……。お芝居で別に魅力があるわけでもなく本当にもう嫌いになっちゃうような、もうなんか仕事場の嫌な人みたいな感じの役とかあるじゃないですか。

クリス:(笑)。うん、ありますあります。

鳥山:そういうのは。

クリス:書きたくない?

鳥山:ないですよね。そう言われてみるとそうかもしれないですね。

クリス:この間台本を読んだとき、鳥山さんに「何のためにこのような演劇書いてますか?」というような質問をいっぱいしましたけど覚えてますか?

鳥山:はい。

クリス:何よりも印象に残ってるのは、鳥山さんが「だって毎日嫌なことばっかりじゃない?」って(笑)。だからこのような愉快な芝居になる訳かなあと思います。なんかシュールとか不条理とかいうより、おっしゃった通りその、悪役が切り取られたみたいな世界。

鳥山:そうですね。わりと自分の好きな面だけを書いてる。もうなんか薄っぺらい感じになるんですけど、そうかもしれませんね。人の中でもその人の好きな面を書いてるのかもしれないなって思いますね。


本当にすっきりしました

ワワフラミンゴ「野ばら」9

――(客席から質問)途中何回か出てくる訳の分からない台本は、どういう基準で題材を選んだんですか?あの、おすもうさんとかの……。

鳥山:あれ実は性別が一緒なんですよね。どっちも男性の台本になってまして……。あ、これネタばれですかね?実はあそこは結構初演と違うんです。中身を全然変えてまして。

クリス:(笑)。

鳥山:あ、中身のネタの話ですよね。男性が女性の話をしているっていうところからまず始めるっていうふうな台本で3つ書いてみて……。私、稽古の前に1時間くらい喫茶店みたいな所に行って半ペラぐらいの台本を書くんですけど、あれもそうなんじゃないかなって。もう覚えてないですけど、なんとなくそんな雰囲気がするんですよね。なんか時間に切羽詰って書いた感がありますね(笑)。

クリス:元の台本ではそういう部分がもっと青春ドラマみたいな……。

鳥山:そうですね、青春ドラマっぽかったですけど、なんか青春ドラマみたいな感じがピンと来なくなったんですね、自分の中で。でもあの台本はちょっと、うけたかどうか分からないんですけど、一応軽いオチみたいのはつけようっていうことで意識はしたと思います、すごい短いんですけど。……他には大丈夫でしょうか。グレゴリーさん、何か……。

クリス:見れて、本当にすっきりしました。なんか最近バタバタばっかりしてて、これ見て本当に気持ちが落ち着きました(笑)。