前回公演「ホーン」のアフタートークで前田司郎さん(五反田団主宰)にお話いただいた内容を書き起こしました。司会は綾門優季さん(Cui?主宰)です。
参加者:
前田司郎(五反田団主宰)
鳥山フキ(ワワフラミンゴ主宰)
司会:綾門優季(Cui?主宰)
綾門:ではまず初めに前田さんから今回のご感想を。
前田:いきなりですね。えっと……なんて言ったらいいのか……(笑)。
綾門:今日初めて観るんですよね?ワワフラミンゴ。
前田:初めて観ました。普通だとなんか、まとめたくなっちゃうというか、ストーリーを付けたくなっちゃうんですけど。全くないですよね、ストーリー。
鳥山:ないですね……。
前田:最初分類しようと思って観てたんですけど、分類もできないし、面白いのか面白くないのかもよくわからないし(笑)。でもなんか、ムカついたりイラッとしたりとか全然しなかったです。
鳥山:ああ、はい……(笑)。
前田:ちょっと喋り方がイライラしたときはあったけど、でもみんな結構いい歳ですよね。そこがすごい好感が持てた。20代前半の人とかにあれをやられちゃうと……。この歳であれをやるっていうことに、なんかすごいポリシーを感じました(笑)。
綾門:20代後半からならオッケー?
前田:そうですね。いろいろあってからあれをやるなら(笑)。皆さん僕よりちょっと若いくらいなのかなって。さっき裏で話したら、鳥山さんと僕、同い歳だったんですよね。
前田:ファミコン世代……。
鳥山:ファミコン世代ですね。
前田:役者はもうちょっと若い?
鳥山:役者はもうちょっと若いです。20代後半から30代前半って感じです。
(鳥山註※本当は20代前半も一人いましたが、ついこう答えてしまいました)
綾門:役者はあれだけの人数がいるのに、皆あの喋り方で、同じトーンに統一されてるっていうのが印象深かったんですが……。
鳥山:普段通りにっていう感じで……。
前田:普段ああなの?みんな!? (笑)
鳥山:でもけっこう普段通りだと思いますね。
前田:鳥山さんっぽいのかな。今日初対面なんですけど、普段の喋りからあんな感じっぽいですもんね。
鳥山:え、そうですか?
前田:うん。
鳥山:(笑)。
前田:そんなことない?なんで笑うんですか?(笑)
綾門:演出で「普段通り」って言われて、ああならない人が大多数だと思うんですけど。
鳥山:ああー、そうですね……。
前田:いきなりなんか、松本清張の話とかしだすし。なんだろうな、夢っぽいは夢っぽいですよね。繋がらないようで繋がってたりとか。その人の個人的な記憶が急に出てきたりとか。それは夢っぽいなと思って。で、そこがなんか繋がって何かちょっと論理的なところに入っていくのかなと思ったら一切排除してる。だから全く先が読めない。どこで終わるのかなと思ったら……。
綾門:あのラストシーンのラストシーン感のなさが半端ないなと思って。
綾門:けっこう歌ってましたね。
前田:歌い上げ方がちょっと違いますもんね(笑)。歌い上げて終わる……。
綾門:観ていて興味深いのが、何が伏線で何が放置されたまま終わるのか、っていうのがわからないんですよね。みかん本当に落ちてきただけだったなとか、逆に意外と度々出て来るパインとか何度も登場する魔笛とか、何が繰り返されて何がそのままスルーされるのかっていうのが全然法則性が掴めないなって。
鳥山:全然何も決めてないです。パッパッパッて置いておいて、そのうち繋がるものは繋がるし繋がらないものは繋がらないまま……。
綾門:それを消したりはしないんですね。繋がらないまま、ふうって置く……。
鳥山:消すというのは……?すいません。
綾門:あ、例えば伏線が周到な物語だったら、作家の立場からだと後からいらない物語を排除したりして……。
前田:でもそういうとこじゃないんじゃないですかね。
綾門:そういうとこじゃないんですかね。
鳥山:……(笑)。
前田:でも怖くないんですか?書き終わって、これ大丈夫かな?って(笑)。ストーリーがあるとお客さんはストーリーを追ってくれるから、まあ保険がかかるじゃないですか。保険かけてないでしょ?
綾門:もうなんか全裸で来てる感じですよね。
鳥山:え、でもうち笑いがあるんで。笑いが、笑いが……。
前田:ああ(笑)。笑いが保険……。でも笑いもストーリーの中のほうが拾いやすいじゃないですか。唐突だから、そこがすごく、すげえ勇気だなと思って見てたんだけど。
鳥山:いやでもストーリーが嫌なんですよ、もう。
前田:わかるわかる。
鳥山:ストーリーが嫌だから、もうできないから、しょうがないっていう……。
前田:ストーリーが嫌いなんですか?好きだけど向こうがこっちのことを好いてくれない?
鳥山:ストーリーは自分ではちょっと作れない。別に大嫌いとか、そういうことではないんですけど。人が別に作る分にはいいし、自分もできることならやってみたいっていう気持ちもあるんですけど……。
前田:もういいやーみたいな?
鳥山:やっぱそうじゃない、って。やり始めるとそうなっちゃうっていう。
前田:僕はストーリーが嫌いだとか言ってるけど、どうしてもストーリーに助けを求めちゃうんだけど、鳥山さんは一切求めないですね。
鳥山:そうですね。
綾門:積み上がっていかない感じがしますよね。毎回リセットっていう。いつまででも続けられそうだし、どこでも終われそう、みたいなところが……。
前田:関係性も別に変わっていかないもんね。登場人物の。
鳥山:そうですね、関係性は変わっていかないです。
綾門:出て戻ると簡単に元に戻ってるみたいなところありますもんね。
前田:……セットもいつ使うんだろうって(笑)。
綾門:けっこういいセットだなと思って見てたんですよね(笑)。
前田:あそこ(舞台中央の椅子)まさか座んないと思わなかった(笑)。すごいですよね、一切触れないですもんね。
鳥山:そうですね。
綾門:せいぜい天井にみかん落ちてきたぐらいですよね、セット使ったところって。
前田:そうですね。あの五重塔みたいのも全然触れないし……(笑)。すごいな……。
綾門:なんで装置をオーダーしたんですか?この全く使わない五重の塔的なものとかも。
鳥山:当日パンフレットに書いてあるんですけど、この話はもともと駒沢公園でやってたイベント用に書いたものが元になってまして、で、あの塔は駒沢公園に実際にある記念塔なんですよね。
鳥山:そうなんです。
前田:全然わかんないよ(笑)。見てても全然わかんない……。
鳥山:そうですね。このテントはですね、そのイベントのときに悪天候で雨が降ってたりしてたので本屋さんが設営して。で、中で靴を作ったりとかのワークショップをしていたので、うちらは中に入れなかったんです。一切。
前田:めちゃめちゃ個人的なことだ(笑)。
綾門:取っ組み合いをする時とかに、あ、入るのかなと思ったら、本当にきれいに後ろの狭い幅をくぐり抜けてたので、断固として入らないんだなと思って。
鳥山:ああ、そうですね。中でワークショップをやっているから、入れない(笑)。
前田:すごいね(笑)。動物みたいですね。一度そこでひどい目にあったので近寄らないみたいな……。
鳥山:いや!恨みに思ってたりとかではないですよ。
前田:これ(舞台上手の机と椅子)は駒沢公園にあったんですか?
鳥山:いえ、うちのセットはこの“机一個と椅子が二、三脚が上手のほうにある”がほとんどなんです。
前田:それも個人的な(笑)。あ、それであるんですね。毎回この椅子と机なんですか?
鳥山:いや、これは今回、舞台美術の袴田さんに用意してもらったんです。
綾門:パイン(直径約160センチのダンボールでできた円形の装置)もそうですか?袴田さんが……。
鳥山:パインもそうですね。前回イベントの時は、役者の森すみれちゃんがつくってくれたんですけど、今回は「こういう感じで」っていうことで袴田さんのほうで作成していただきました。
綾門:あれすごく稽古しづらそうですね。稽古場にもって行きづらそうな小道具だなと思って見てました。
鳥山:あれは稽古場では無かったんです。こっち入ってから使い出したって感じで、それまでは想像で。
綾門:想像でこれをやってたんですか?
鳥山:そうですね。
前田:あのパインをあそこの段階で留めるっていうのは何か意味があるんですか?もっとパインっぽくする努力をしないっていう……。
鳥山:うーん……なんか……。
前田:嫌だったんだ(笑)。あの大きさのパインが実際に売ってたら使う?
鳥山:あの大きさのパインが実際に売ってたら!?
前田:(笑)。
綾門:ないですからね、そういうこと。
鳥山:うーん、まあ売ってたら使う(笑)。
前田:本物じゃないんだったらもうあのぐらいでいいやってことでしょ?
鳥山:ま、そうですね。
前田:あー……、それだったらわかります(笑)。でも本物のパインだったらさ、グチャッてなるよね、たぶん。
前田:あと、もうちょい薄いよね。
鳥山:薄い……?
前田:俺の食べたパイン、もっと薄かった。
鳥山:あの、切り方次第なんで。
前田:自ら切ったやつ?缶詰のやつじゃなくて?
鳥山:ああ、そうですね……。
綾門:自ら切ったらああいう形にならないですよね。
前田:おばあちゃんちで食べてたやつでしょ?缶詰でさ、開けると中からスライスのパインが出てきて、食べるとベロが痛くなるやつね。
鳥山:うーん、それちょっと……。
綾門:それじゃない。
前田:それじゃない。
綾門:普通のパイン輪切りにしてもああならないですよ。
前田:いや、普通のパインは、なんかガショーンってやって、ガショーンってやるんですよね?で、シャコーンってなって(笑)。そうすると輪切りになる……。
鳥山:そうです。
前田:それ、じゃあもうフレッシュなやつだ。ああ、なんだ、缶詰のやつだと思ってたんで。
鳥山:私、缶詰のパインてあんまり買ったことなくて……。
前田:あ、ほんとに?貧しかったんですか?
鳥山:なんでここで馬鹿にするんですか(笑)。
前田:いや同い年だから、同じようなパイン食べてたのかなって。でもパイン出るとやっぱりテンション上がりましたよね。
鳥山:そうですね。やっぱり大きいものがあると……。
前田:え、でも幼い頃フレッシュなパイン食べてたんですか?ごめんその話長いかな(笑)。そっか、じゃあうちの方が貧しかったのかもしれない(笑)。フレッシュなやつを食べてなかったですね。
鳥山:うちはフレッシュでしたよ。
前田:南国ですか?(笑)
鳥山:南国じゃないです……(笑)。
前田:……そろそろ(終了時間?)……。
綾門:そんな切り方します!?(笑)
前田:なんか質問的なコーナーとかやりますか?
綾門:質疑応答はないんですよね?
鳥山:一応なしでっていうふうに言ってたんですけども……。
前田:みんないろいろ聞きたいんじゃないですか?
綾門:疑問点が頻出の作品だと思うんで、もし何か質問などございましたら……って聞くとなかったりするんですよね。
前田:客席がオシャレですよね、なんか。客層が、TSUTAYAにいそうな(笑)。あの代官山のTSUTAYAとか。五反田団もうちょっとBOOK-OFFっぽい人だから(笑)。
――(客席から質問)着想を得る時は、イメージと言葉、どちらで出てきますか?
鳥山:一番最初は……言葉じゃないです。イメージですね。
前田:もうちょっと長めに答えたほうが(笑)。
綾門:驚くほど端的ですね。
前田:どんなイメージ、例えば今回だったらどんなイメージだったの?絵的な……。
鳥山:あの、「ホーン」てタイトルだったんですけど……。
前田:ああ、「ホーン」って「本」だったんだー。
鳥山:いや、違います。
前田:あ、違うの(笑)。
鳥山:本当にすみません、ズタッと話を切ってしまって失礼な……。申し訳ないです……。
綾門:「ホーン」ってタイトルは、どこから来たんですか?
鳥山:それはあの、一応ホルンの音というか響きみたいのをイメージして、ちょっと遠くから聞こえてくる音とか声みたいな感じでイメージしてっていう感じですね。
前田:音から入ったってことですか?
鳥山:いやあの……なんか雰囲気です雰囲気。
前田:説明できないんですね。
鳥山:ホワーンみたいな。
前田:ホワーンと来て(笑)。
鳥山:それがなんかいろいろ崩れたりするんですよ。なんか上手くまとまらない時とかがあって……。
綾門:これ上手くまとまってます?まとまった状態がこれなんですか?
鳥山:そうですね、まあまあ……(笑)。
前田:いいんじゃないですか。
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2014.12.7(日)五反田アトリエヘリコプター
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